2009-06-04
3
3 : ミケ
「わたしはだめだなあ」
「と、突然どうしたんだにゃ?」
「なんだか人と会話をしてると、やっぱり、わたしっていろんな人より劣っているだなあ、と思って。被害妄想だろうけど……」
「にゃにゃ、今更気づいたのかにゃ!」
「や、やっぱりですか」
「そりゃそうだにゃ。みんな無意識のうちに相手を比較してるもんにゃー。君はそういうことができないから、気づかなかったんだろうけど、社会的にはそういう仕組みだにゃんにゃ。君は見下されてるんだにゃ!」
「そ、そんな……」
「君は人の悪い部分をまだあんまり知らないみたいだにゃう。たとえば、よくかわいい女の子の隣と一緒に、ちょっと目立たない子がいたりするのを見たことあるかにゃ?」
「……あ、あるね」
「可能性で言うと、友達同士かもしれないし、親友同士かもしれないにゃ。でも、もしかしたら、かわいい女の子が自分を映えるように見せたいがために、一緒にいるだけかもしれないにょ。友達のフリしてるだけかもしれないにょ! もしかしたら、君が友達だと思っていても、相手はそうと思ってないかもしれないよ。友達のフリしてるだけかもにゃ」
「ええええええ」
「そういう世界だったりするんだにゃ。この世界は」
「う。うそー……」
「君は基本的に理想が高いにゃー。それは恋愛に限らず、すべてのことに言えるかもしれないにょ。この世は理想郷じゃないんだにゃー。少なくとも君の望む、完全な対等な関係を築くことなんてできないにゃん。だって、君は劣っているんだから。もしかしたら、劣っている君にも、ちゃんとした友達は、ほんのちょっとはできるかもしれないけど、多くの場合、みんな君を見下している。そういう感じだにゃ。対等なんて、無理だにゃん」
「うそだうそだうそだ」
「君が信じている世界はだんだんと崩れていくにゃ」
「うそだうそだ」
「そして君は社会に取り込まれる」
「うそだ」
「誰しもそうやって、大人になるんだ」
「うそだ! 僕は信じない」
「ま、裏切られるのが怖いくせに、君は、信じるんだから、まったく、バカだにゃー。ま、がんばれにゃ」
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2 : カガミさん
金魚を一匹買うときは水槽の近くに鏡を置いておくとよいといいます。金魚は鏡に映った自分を、お友達だと思ってさびしくなくなるから。
*
僕は無性に鏡がほしくなったのです。こう、全身が写せる大きなおおきな鏡。そういうわけでハードオフに鏡を探しに行きました。
三百円。値札に驚く僕の目の前には思い描いていた大きな鏡。これはいいなあ、うははのは、と店員さんにこれ買いますというと店員さんは驚いた表情。
「この鏡はこの角度で見るとなんだか女性の影が見えたりするんですが、大丈夫でしょうか?」
ためしにその角度で見ると、確かに女の子の影が見える。どうも黒髪ロングの小さな女の子のよう。僕の眼鏡の度があってないせいか、結構はっきり見える。
「あ、別に大丈夫ッス」
僕はオカルト的なものは信じないし、別にいいやと買いました。大きな鏡だったので、持って帰るのに苦労しました。なんとかエイヤっと僕の部屋にレイアウト。玄関に近くて、風呂上りに見える位置。場所は最適。
*
何日か経って僕は、鏡を見ているとどうも女性の影が日々少しずつ動いている気がしました。原因はきっと、毎日風呂上りにいろんな所を丸出しで歩いていたりしてたせいでしょう。たぶん。そう考えると、だんだんと鏡に悪いことをしてきた気がしました。
なので鏡をいたわろうと考えて、身に着けていたバスタオルで鏡を磨いたら、なぜか鏡の中から少女がでてきて言いました。
「悪い気がするならハダカのまま鏡を磨くな! ばかあっ」
これが僕とカガミさんとの出会いでした。
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1
1 : 君がいるから
いつまでも目を開けてないで、ゆっくり閉じて?
まぶたをそっと指で触れて、深呼吸。
肺に空気が入るのをちゃんと感じて?
うん。そう。ゆっくりゆっくり。
ね、落ち着いた?
今はまだ、あなたはひとりだけど。
いつの日か、きっと素敵な人と一緒になって
大切な時間を共有するよ。
だから焦らないで。何かを憎まないで。
嫉妬しないで。悪いこと、思わないで。
その時が来るまで、いつだって私は
ずっとあなたの側で、あなただけを思って、
いるから。
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2009-06-02
2
2 : 見える見えない
「こうやって行くなんて話、あたし聞いてなかったんだからね! まったく、あんたはいっつもこう。思いつきで行動するんだから、ホント頭どうかしてるんじゃないの? 普通タクシーでしょ。ハングライダーってどう考えたらなるのよ!」
ゴーグルをした少女は、風に長い黒髪をなびかせながらハングライダーをうまく操っている。もちろん隣のハングライダーに向かって絶叫しながら、である。
「いやー、あー。まあ、ごめん。ほんとごめん。今回は完全にぼくのミスです。こんなに寒いとは思わなかった」
「そこじゃねえ、あんたそこじゃねえよ! 寒いから文句言ってるんじゃないよ。確かに寒いけどさ。ったく、もう。こうやって女子高生ルックで飛んでるあたしの身になってみなよ。下から丸見えじゃないの。いろんな意味で狂ってる」
「ぼくだって学生服だ」
「ぼくだってって何なのさ! なに張り合おうって思ってるの、見えるっていうの? 何が! どんな風に! 見えないわ! 黙りなさい!」
「す、すみません」
高層ビル群の間を縫うように、二つのハングライダーが飛んでいる。寄り添うように、しゅるりしゅるりと。
彼女たちは今日、卒業式なのである。遅刻ぎりぎりだ。
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1
1 : ABCスープ
中学生は、平気でぼくのことを40歳とかいうので泣きそうになった。
頭にきたので「じゃあ結婚してるように見える?」と尋ねると「してないと思う」
ぼくは死にたくなった。
昔、ABCスープというのが給食で出ていたと語られた。
「知らないなあ。本当にスープなの?」「ほんとほんとだよー。先生信じてないでしょー」
「いや、信じてる。だって、ABCビスケットみたいな小さいラーメンがたくさん入ってるんだよね。しかも自分の名前を最後まで残して最後に食べてたとか、リアリティがある。おれも食べたいなあ、それ」「先生、こどもー」「どこが」
それにぼくの時代は、牛乳パックは三角だったと決め付けられた。違うよ。普通に長方形のだった。同僚の1コ下の女の子にも決め付けられた。その子曰く
「先生(ぼくのこと)の年代は普通三角ですよ」「何言ってるの」「だって私は三角でしたよ」「ほんとかよー。おれは長方形だったよ」「嘘だぁ」
三角形のものなんて見たことない。ピラミッドパワーか、ピラミッド。
自宅に帰り、『ABCスープ』で検索したら、ほんとはABCマカロニって書いてあった。
マカロニとラーメンってぜんぜん違うじゃないの。まったく。



